フォーム営業の教科書 第3部 送る

第5章 文面の書き方

アポツム編集部情報は2026年11月時点

フォーム営業で、いちばん差がつくのは文面です。同じ提案でも、文面しだいで「担当の部署に回そう」と思われることも、最初の数行で読むのをやめられることもあります。

文面は、センスで書くものではありません。誰が、どんな順番で読むのかを知り、部品ごとに役割を決めて組み立てれば、だれでも一定の質で書けます。

この章では、文面を部品に分け、それぞれの書き方を「悪い例 → よい例」の書き直しで説明します。中心になる「なぜ御社か(提案の理由)」は、手順と言い回しまでくわしく扱います。最後に、送る前のチェックリストを載せました。例文の全文は第6章にまとめています。

5-1 フォームの文面は誰がどう読むか

問い合わせフォームに入力した文面は、提案したい部署の人に直接届くとは限りません。多くの場合、まず問い合わせの窓口の担当者が受け取り、仕分けてから、関係のありそうな部署に回します。

3人の読み手と、それぞれの関心

文面を読む人は、大きく分けて3人います。立場によって、文面から知りたいことが違います。

読み手主な立場文面から知りたいこと
受信担当者総務・広報・代表窓口など誰からの何の用件か。どこに回すか
担当部署の人提案の中身に関係する部署自分たちの仕事に関係があるか
決裁者部長・役員・経営者など上に説明できるか。信用できる相手か

受信担当者は、お客様や取引先からの問い合わせも扱っており、1通に長い時間はかけられません。最初の数行で用件が分からない文面は、そこで読むのをやめられると考えておきましょう。

図1フォームの文面が読まれる流れ
フォームの文面が読まれる流れ:受信担当者が読む、担当部署へ回す、担当者が判断する、上司に相談する、返信・予約
図の内容を文字で読む
  1. 受信担当者が読む送り主と用件を見て仕分ける
  2. 担当部署へ回す関係がありそうなら転送する
  3. 担当者が判断する自分たちの仕事に合うかを見る
  4. 上司に相談する話を聞くかどうかを決める
  5. 返信・予約商談の日程が決まる

この流れのどこかで「よく分からない」と思われると、文面はそこで止まります。

転送されても1通で伝わるように書く

文面は、社内で転送されたり、印刷して回覧されたりします。このとき、フォームの「会社名」「電話番号」などの入力欄の中身が、文面と一緒に回るとは限りません。そこで、次の3つを守ります。

  • 文面の中で名乗り、最後に送信者の情報をまとめて書く
  • 誰に読んでほしいかを書く(例:「販促のご担当の方にお回しいただけますと幸いです」)
  • 前のやりとりを知らない人が読んでも、意味が通るように書く

よくある失敗は、専門用語を並べて受信担当者が回す先を判断できない文面や、用件が最後の段落にしかない文面です。文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022年)も、結論は早めに示し、理由や詳細はそのあとに書くよう勧めています。役所の文書のための手引きですが、忙しい読み手に向けて書く点は、営業の文面も同じです。

5-2 文面の部品と、件名・冒頭の3行

文面を組み立てる6つの部品

文面は、次の6つの部品で組み立てます。この順に並べると、3人の読み手が、それぞれ知りたいことを上から順に見つけられます。

図2文面を組み立てる6つの部品
文面を組み立てる6つの部品:件名・冒頭の3行、なぜ御社か、価値、根拠、お願いは1つ、送信者と停止の案内
図の内容を文字で読む
  1. 件名・冒頭の3行誰が・なぜ・何の用かを先に
  2. なぜ御社か事実にもとづく理由を一文で
  3. 価値相手の仕事の何が変わるか
  4. 根拠実績は条件つきで控えめに
  5. お願いは1つ予約リンクか資料を1つ
  6. 送信者と停止の案内連絡先と断り方を最後に
部品目安の長さ
件名・冒頭の3行:誰が、なぜ、何の用かを先に伝える3行
なぜ御社か:この会社に連絡した理由を、事実で示す1〜2文
価値:相手の仕事の何が、どう変わるか1〜3文
根拠:価値を信じてよい理由を、控えめに示す1文
お願い:次の一歩を1つだけ頼む2〜4行
送信者の情報と停止の案内5〜7行

部品を並べると、文面の骨組みは次のようになります。〔 〕は書きかえるところです。この章の悪い例・よい例は、説明のために作った架空の文面です。

例文文面の骨組み
〔会社名〕
〔部署名〕ご担当者様

はじめてご連絡いたします。株式会社〇〇の山田と申します。
〔なぜ御社か:公開されている事実〕を拝見し、〔提案の要点〕についてご案内したく、ご連絡しました。

〔価値:相手の仕事の何が、どう変わるか〕
〔根拠:範囲と時点をつけた実績〕

〔お願い:15分のオンライン説明など〕
〔予約リンク〕

今後のご案内が不要な場合は、下記のページからお知らせください。
〔停止の案内のURL〕

〔送信者の情報:会社名・部署・氏名・住所・電話・メール〕

件名の書き方

フォームに件名の欄があるときは、件名だけで用件と送り主が分かるようにします。受信担当者は、件名を見て回す先の見当をつけるからです。

悪い例

【重要】ご確認のお願いRe: 先日のお問い合わせの件業務効率化のご提案

1つ目は中身を伝えずに急がせ、2つ目はやりとりがあったように見せかけています。3つ目は、どの会社にも送れる件名です。

例文よい例 件名の書き直し
〔展示会名〕ご出展にあたっての製品紹介動画のご提案(株式会社〇〇)
新店舗の厨房機器の点検について(株式会社〇〇 山田)

件名は「相手の場面 + 提案の中身 + 自社名」で組み立てます。「至急」「重要」「再送」「Re:」は使いません。問い合わせの種別の選び方は、第7章で説明します。

冒頭の3行

文面の最初の3行には、次の3つを入れます。

  1. 名乗り:会社名と名前
  2. なぜ御社か:連絡した理由を一文で
  3. 用件:何をお願いしたいのか

悪い例

平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。弊社は1998年の創業以来、お客様第一をモットーに、さまざまなソリューションをご提供してまいりました。このたびは、貴社のさらなるご発展に貢献できるご提案をさせていただきたく、ご連絡させていただきました。

3行を使っても、なぜこの会社に連絡したのか、何を頼みたいのかが分かりません。「平素より」「お引き立て」は取引のある相手に使う言葉で、初めての相手に使うと、取引があるように見えてしまいます。

例文よい例 冒頭の3行の書き直し
はじめてご連絡いたします。株式会社〇〇の山田と申します。
貴社が〔月〕の〔展示会名〕に出展されると、出展者一覧で拝見しました。
ブースで流す製品紹介の動画について、15分ほどご説明させていただけないでしょうか。

1行目で誰か、2行目でなぜか、3行目で何の用かが分かります。受信担当者は、この3行だけで「展示会の担当に回そう」と判断できます。会社の紹介は、価値を説明するところで一言添えれば十分です。

5-3 なぜ御社か:提案の理由の書き方

文面の中で、いちばん大切で、いちばん手間がかかるのが「なぜ御社か」です。本書では、これを「提案の理由」と呼びます。受信担当者が回す先を決める手がかりにもなります。

提案の理由は「事実」と「つながり」でできている

提案の理由は、次の2つを合わせた一文か二文です。

  • 事実:相手の会社について、公開されている情報から分かること
  • つながり:その事実と、自社の提案がどう関係するか

たとえば、「貴社が〔地域〕に物流センターを新設されると、〔日付〕のお知らせで拝見しました」が事実です。「新しいセンターの立ち上げでは、作業手順をそろえる場面が多いと考え、ご連絡しました」がつながりです。

事実だけでは「調べたことを並べただけ」に、つながりだけでは一般論になります。2つがそろって、はじめて提案の理由になります。

理由の強さには段階がある

同じ「理由」でも、どこまで相手に固有かによって、強さが違います。

段階書き方の例読み手の受け取り方
弱い:業種だけ「〔業種〕の企業様にご案内しています」同じ業種の全社に送っている
ふつう:事業の特徴「〔製品〕を〔業界〕向けに製造されていると拝見しました」少なくとも事業は調べている
強い:最近の動き「〔日付〕に〔地域〕で新工場の建設を始められると拝見しました」今、うちに連絡してきた理由が分かる

いちばん強いのは、提案のきっかけ(第3章)にふれた理由です。目立つ動きがない会社でも、事業の特徴からなら「ふつう」の理由は書けます。業種だけの理由しか書けないときは、その会社に送るのを見送ることも考えます。

理由を書く5つの手順

図3提案の理由を書く5つの手順
提案の理由を書く5つの手順:事実を1つ選ぶ、出典と日付を確かめる、事実と推測を分ける、提案とつなぐ、社名を隠して読む
図の内容を文字で読む
  1. 事実を1つ選ぶお知らせ・求人・出展者一覧から
  2. 出典と日付を確かめる公式の情報か、古くないか
  3. 事実と推測を分ける事実は言い切り、推測はぼかす
  4. 提案とつなぐ事実と自社の提案の接点を書く
  5. 社名を隠して読む他社にも通じるなら書き直す
  1. 事実を1つ選ぶ:お知らせ、採用ページ、出展者一覧、事業内容のページなどから、提案に関係する事実を1つだけ選びます。いくつも並べると、理由がぼやけます。
  2. 出典と日付を確かめる:公式の情報で確かめ、いつの情報かを見ます。リストに出典のURLと確かめた日を残すと、あとで聞かれても答えられます(第4章)。
  3. 事実と推測を分ける:事実は「拝見しました」と言い切ります。推測は「〜の場面があるのではないかと考えました」のように、推測と分かる形で書きます。
  4. 提案とつなぐ:「その際に」「そこで」などで、事実と自社の提案をつなぎます。相手の仕事の場面を思い浮かべて書きます。
  5. 社名を隠して読む:相手の社名を隠して読み直します。ほかの会社にも通じる文なら、まだ理由になっていません。

書き直しの例

よくある4つの失敗を、書き直してみます。

悪い例1:どの会社にも言える

貴社のホームページを拝見し、大変感銘を受けました。ぜひ当社のサービスをご紹介させてください。

「ホームページを拝見し」は、どの会社にも書けます。何に感銘を受けたのかもありません。

例文よい例1
貴社のサイトの施工事例で、〔地域〕の店舗の改装を多く手がけていらっしゃると拝見しました。
事例が多いサイトでは、地域や業種で絞り込めると、見る方が近い事例を探しやすくなります。そのための改修について、ご案内したくご連絡しました。

悪い例2:相手の状況を決めつける

〔業界〕は深刻な人手不足で、貴社も採用にお困りのことと存じます。

相手が本当に困っているかは、相手にしか分かりません。決めつけられた読み手は「うちのことを知らないのに」と感じます。

例文よい例2
貴社の採用ページで、〔職種〕を通年で募集されていると拝見しました。
募集が長く続く職種では、求人の原稿を見直す場面もあるかと存じます。もし同じような状況でしたら、お役に立てるかもしれないと考え、ご連絡しました。

悪い例3:個人の情報にふれる

代表の〇〇様のSNSで、先日〇〇にご旅行されたと拝見しました。

会社への提案に、個人の私的な情報を持ち込むと、読み手は警戒します。使うのは、会社として公開している情報だけにします。

例文よい例3
代表メッセージで、〔年〕までに海外での売上を伸ばす方針を掲げていらっしゃると拝見しました。

悪い例4:日付を確かめていない

先日、〔地域〕に新店舗をオープンされたとのこと、おめでとうございます。

調べてみると2年前の話題だった、ということがあります。「先日」と書くなら、日付を必ず確かめます。古い話題しかないときは、事業の特徴から理由を書きます。

例文よい例4
〔日付〕のお知らせで、〔地域〕に〔店舗数〕店目となる店舗を開かれると拝見しました。

つなぎの一文の例

事実と提案をつなぐ一文は、きっかけごとに型を持っておくと書きやすくなります。

きっかけつなぎの一文の例
展示会への出展出展の準備で、ブースで見せる資料や映像をそろえる時期かと考えました
新店舗・新工場立ち上げの時期は、設備の点検の手順を決める場面があるかと存じます
採用の強化入社される方が増えると、受け入れの準備にも手間がかかることがあります
資金調達組織が大きくなる時期に、管理部門の体制づくりをお手伝いできればと考えました
新サービスの発表発表のあとは、お客様からのお問い合わせが増える時期かと存じます
事業の特徴〔製品〕を多品種で扱われる場合、〔業務〕の管理が細かくなることがあります

ほめ言葉より、正確な事実を

「感銘を受けました」といったほめ言葉は、理由の代わりにならず、売り込みの言葉に聞こえます。相手の事実を正確に書くことが、いちばんの敬意です。受賞にふれるときも「おめでとうございます」と短く添える程度にします。

理由が見つからないとき・手間を減らすには

事業内容を見ても提案とのつながりが見つからない会社は、狙う顧客像(第3章)から外れているのかもしれません。無理に理由を作らず、今は送らないと決めることも大切です。

手間を減らすには、同じきっかけの会社をまとめて書きます。同じ展示会の出展者なら、つなぎの一文は共通にでき、変えるのは事実の部分だけです。また、1社にかける時間を決めておきます。たとえば1社5分なら、5分 × 40社 = 200分(3時間20分)です。この試算をもとに、1日に書ける数を決めます。

5-4 価値と根拠の書き方

価値は「相手の仕事の場面」で書く

価値とは、提案を受け入れたときに、相手の仕事の何が、どう変わるかです。自社の製品の機能の説明ではありません。「誰が、どの場面で、何を、どうできるようになるか」で書きます。

悪い例

当社のサービスは、AIを活用した最先端のオールインワンプラットフォームです。業務効率化とDXを同時に実現し、貴社の生産性を飛躍的に向上させます。

カタカナ語と大きな言葉ばかりで、何ができるのかが分かりません。「飛躍的に」は、根拠のない言い切りです。

例文よい例 価値の書き直し
当社は、見積書と請求書を同じ画面で作り、取引先へそのまま送れる仕組みを提供しています。
現場ごとに見積もりを出される場合でも、事務の方が書式をそろえ直す手間を減らせます。

できることが10あっても、提案の理由に合う1つだけを書きます。言葉は相手のサイトの言葉(「現場」「店舗」「拠点」など)に合わせ、「ソリューション」は「仕組み」のように言いかえます。

根拠は、範囲と時点をつけて控えめに

根拠とは、価値を信じてよい理由です。実績、事例、第三者の評価などがあります。担当部署の人が上司に回すときの材料にもなるので、正確さがいちばん大切です。

数字には範囲と時点を添え、効果の数字には「〔会社〕の場合」と条件を添えます。事例の社名は、許可を得たものだけを出します。他社の製品は悪く言いません。

悪い例

導入企業の満足度No.1!業界最安値で、必ず成果が出ます。

例文よい例 根拠の書き直し
2025年度は、〔業種〕の会社様〔社数〕社でお使いいただきました。
効果は会社ごとに異なりますが、導入された会社様の事例を資料にまとめています。

景品表示法の考え方を物差しにする

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、実際や他社のものより著しくよいと一般消費者に思わせる表示などを禁じています。品質についての「優良誤認表示」(第5条第1号)と、価格などの取引条件についての「有利誤認表示」(同条第2号)が代表です。

この法律は一般消費者の利益を守るためのもので(第1条)、事業者だけを相手にする提案にそのまま当てはまるとは限りません。自社の場合は専門家に確かめてください。それでも、根拠を書くときのよい物差しになります。根拠のない誇張は、法律の問題になる前に、読み手の信頼を失わせます。

消費者庁は2024年に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。その概要によると、令和5年度に措置命令を受けた44事業者のうち、13事業者の事案がNo.1表示に関わるものでした。報告書は、No.1表示に合理的な根拠があるといえるには、次の4点を満たす必要があるとしています。

  • 比べる商品・サービスを適切に選んでいる(原則として主要な競合を含める)
  • 調査の対象者を適切に選んでいる(「顧客満足度」なら実際の利用者など)
  • 調査を公平な方法で行っている
  • 表示の内容と調査の結果が対応している

また、消費者庁の解説では、わざと偽った場合だけでなく、誤って表示した場合も規制の対象になりうるとしています。文面の型に入れた数字も、時点を確かめて更新しましょう。

避けたい表現何が問題か言いかえ
業界No.1、シェアNo.1比べた範囲や調査の方法が分からない根拠と範囲を添える。示せなければ書かない
業界最安、最安値比べた相手と時点が分からない自社の料金だけを書く
必ず、確実に、100%結果は相手の条件で変わる「〜の手間を減らせます」「〜の事例があります」
今だけ、先着〇社本当でなければ相手をだます本当の期限があるときだけ日付を書く
他社は〜ですが他社をおとしめている自社でできることだけを書く

不安をあおらない

「このままでは取り残されます」「対応しないと罰則があります」のように、相手を不安にさせて動かそうとする書き方はしません。読み手に警戒され、会社の評判も落とします。法律や制度の話題にふれるときは、公的な情報のURLを添え、事実だけを書きます。

5-5 お願いは1つ・送信者の情報・停止の案内

お願いは1つにしぼる

文面の最後で相手に頼むことは、1つにしぼります。お願いが多いと、読み手はどれに応えればよいか迷い、どれにも応えずに終わります。15分のオンライン説明、資料、セミナーなど、相手の負担が小さい「最初の一歩」から1つを選びます(第3章)。

悪い例

ぜひ一度、お打ち合わせのお時間を頂戴できますと幸いです。ご都合のよい日時を3つほどお知らせください。また、資料もご覧いただき、ご感想をお聞かせください。来月にはセミナーも開催しますので、あわせてご検討ください。

例文よい例 お願いの書き直し
ご関心をお持ちいただけましたら、15分ほどオンラインでご説明させてください。
下記のページから、ご都合のよい日時をお選びいただけます(ご登録は不要です)。
https://example.com/booking
先に資料をご覧になりたい場合は、こちらからお読みいただけます。
https://example.com/document

お願いは「15分の説明」の1つです。資料のURLは、説明までは要らない相手のための軽い選択肢で、並べるのはこの2つまでにします。

予約リンクには3つの情報を添える

リンクだけを置くと、何の予約なのかが伝わりません。所要時間(15分など)、形式(オンラインなど)、何をする場か(説明、相談など)の3つを添えます。字数に余裕があれば、合う日時がないときの伝え方も書きます。資料を読むのに会社名などの入力が要るときは、そのことも書いておきます。

送信者の情報は文面の最後にまとめる

文面の最後に、会社名・部署名・氏名・住所・電話番号・メールアドレス・会社のサイトのURLをまとめて書きます。法律上の表示の考え方は第2章で説明しました。入力欄に書いた情報は転送されないことがあるので、文面にも必ず書きます。書いた電話やメールに連絡が来たら誰が受けるかも、決めておきます(第7章)。

停止の案内は、短く、軽く、はっきりと

停止の案内は、送信者の情報のすぐ前に置きます。書き方のポイントは3つです。

  • 1か所に、見つけやすく書く
  • 手続きを軽くする(URLを開いて送るだけ、返信でひとことだけ、など)
  • 申し出のあとどうなるかを書く(「以後、当社からはご連絡いたしません」)

悪い例

※配信停止をご希望の場合は、貴社名・ご担当者名・ご希望の理由・本メッセージの受信日時をご記入のうえ、別途ご連絡ください。

理由や受信日時まで求めると、相手に余計な手間がかかります。連絡を止めたい相手ほど、手間のかかる手続きを嫌います。

例文よい例 停止の案内と送信者の情報
今後のご案内が不要な場合は、下記のページからお知らせください。以後、当社からはご連絡いたしません。
https://example.com/optout

株式会社〇〇 営業部 山田
〒000-0000 東京都〇〇区〇〇1-2-3
電話:03-0000-0000
メール:yamada@example.com
https://example.com

停止の依頼を受けたあとの返し方は第8章、社内での処理の流れは第11章で説明します。

5-6 文字数制限への対応

問い合わせフォームの文面を入れる欄には、文字数の上限があることがあります。上限はフォームごとに違い、書かれていないこともあります。上限のあるフォームの割合を示す公的な調査は見当たらないため、本書では「上限はさまざま」という前提で進めます。

3つの長さを先に用意する

上限に出会ってから削ると、大事な部品を消しがちです。最初から3つの長さで用意します。

長さ目安入れる部品
長め700〜800字すべての部品。理由は二文、資料の案内も
ふつう400〜500字すべての部品。理由と根拠は一文ずつ
短文300字以内名乗り・理由・お願い・停止の案内・送信者の情報

3つの長さの例文は、第6章の例文1〜3にあります。

削る順番と、残す部品

削るときは、次の順に進めます。

  1. あいさつと前置き
  2. 会社の紹介
  3. 機能や実績の並べ立て(資料のURLに任せる)
  4. 根拠の一文
  5. 長い言い回し
  6. 送信者の情報の形(1〜2行にまとめる)

名乗り・なぜ御社か・お願い・送信者の情報・停止の案内は、最後まで残します。

言い回しを短くする例

長い言い回し短い言い回し
ご案内させていただきたく、ご連絡を差し上げた次第ですご案内したく、ご連絡しました
〜することが可能となっております〜できます
詳細につきましては、下記の資料にてご確認いただけますくわしくは資料をご覧ください

数え方の違いに気をつける

改行やURLの数え方はフォームによって違うので、上限ぎりぎりにはしません。上限を超えた分が、エラーも出ずに切り捨てられることもあります。貼り付けたら、最後まで入ったかを確かめます(第7章)。

5-7 敬語と読みやすさ・避ける表現

敬語は「正しく、控えめに」

文化審議会の「敬語の指針」(2007年)は、敬語を尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の5つに分けて説明しています。文面でよく迷うのは、次の点です。

  • 重ねすぎ:同じ種類の敬語を重ねた「二重敬語」(例:「お読みになられる」)は、一般に適切ではないとされています。「おっしゃられる」は「おっしゃる」で十分です。謙譲の言い方を重ねた「拝見させていただきました」も、「拝見しました」で足ります。
  • 「させていただく」:「敬語の指針」によると、この形は基本的に、相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場合に使います。許可を求める「ご説明させていただけないでしょうか」は自然です。一方、「ご連絡させていただきました」は「ご連絡しました」のほうが簡潔です。
  • 貴社と御社:一般に、書き言葉では「貴社」、話し言葉では「御社」を使います。本書の見出しでは「なぜ御社か」と書いていますが、文面の中では「貴社」を使います。

「敬語の指針」は、敬語をたくさん使えば丁寧になるわけではないと述べています。電子メールで一人から多くの人に送るとき、言葉づかいが画一的になりがちだという指摘にもふれています。1通ずつ、読む人を思い浮かべて書きましょう。

読みやすさの決まり

「公用文作成の考え方」は、一文が50〜60字ほどになったら読みにくくなっていないか意識するとよい、としています。ほかにも、一文の論点は1つにする、3つ以上並べるなら箇条書きにする、二重否定は避ける、などの工夫を挙げています。フォームの文面では、次も加えます。

  • 1つの段落は3行までにし、段落の間に空行を入れる
  • 「①」「㈱」など文字化けしやすい記号や、半角カナは使わない
  • 「★」「■」などの飾りや、絵文字・顔文字は使わない

悪い例

弊社サービスにつきましては、貴社の業務効率化に必ずや資するものと確信しておりますので、ご多用中のところ誠に恐縮ではございますが、ご検討いただけますと幸いに存じますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

一文が100字もあり、「ので」で何度もつないでいます。「確信しております」は、押しつけに聞こえます。

例文よい例 読みやすさの書き直し
お忙しいところ恐れ入ります。
ご関心がございましたら、15分ほどでご説明いたします。

避ける表現

表現理由言いかえ
ご担当者様に必ずお渡しください窓口の人に指図しているご担当の部署にお回しいただけますと幸いです
本日中にご返信ください頼んでいない相手を急かすご関心があればお知らせください
お見積もりをお願いしたく問い合わせを装っている提案であることを最初に書く

5-8 AIで文面を作るときの注意

生成AIは、文面の下書きに役立つ一方で、もっともらしい誤りを書くことがあります。ツールの使い方は第10章で扱い、ここでは文面に関わる3点にしぼります。場面ごとにそのまま使える指示文は、巻末の「AIプロンプト集」にまとめました。

1. 事実は人が出典で確かめる

個人情報保護委員会の注意喚起(2023年)は、生成AIの応答に不正確な内容が含まれることがあると指摘しています。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年)は、AIの出力の精度とリスクを理解して使うよう求めています。生成物の利用に人間の判断を介在させる、といった対策も挙げています。

提案の理由に書く事実は、相手の公式サイトなどの出典で確かめます。AIには、確かめた事実だけを渡して書かせると、誤りが入りにくくなります。

2. 決めつけと誇張を消す

AIの下書きには、ほめすぎ、決めつけ、大げさな言葉が入りがちです。

悪い例(AIの下書きによくある形)

貴社の革新的な取り組みに深く感銘を受けました。昨今の人手不足の中、貴社も業務効率化に課題を抱えていらっしゃることと存じます。当社のAIソリューションなら、業務時間を劇的に削減できます。

例文よい例 人が直した形
貴社のお知らせで、〔地域〕に2か所目の配送拠点を開設されると拝見しました。
拠点が増えると、拠点ごとの作業手順をそろえる場面があるのではないかと考え、ご連絡しました。
当社は、作業手順を写真つきの手順書にまとめ、拠点の間で共有できる仕組みを提供しています。

3. 個人情報と社外秘を入れない

個人情報保護委員会は、個人情報を含む指示をAIに入力するときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めています。入力したデータが機械学習に使われないかなども確かめるよう注意しています。「AI事業者ガイドライン」も、個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう求めています。担当者の氏名や名刺・商談のメモはそのまま入れず、社内のルールと、使うサービスの利用規約を確かめます。

例文AIへの指示の例
次の条件で、問い合わせフォームに送る提案の文面の下書きを書いてください。
・相手の会社について使ってよい事実は、下の「事実」だけです。推測で事実を足さないでください。
・相手の課題を決めつけず、「No.1」「必ず」など根拠を示せない言葉は使わないでください。
・お願いは15分のオンライン説明の1つだけにし、全体を450字以内にしてください。
事実:〔日付〕のお知らせで、〔地域〕に配送拠点を新設すると発表(出典:〔URL〕)
当社の提供内容:〔提供内容〕

5-9 送る前の文面チェックリスト

最後に、送る前の点検です。次の8項目を、1通ずつ確かめます。

図4送る前の文面チェック
送る前の文面チェック:宛名と差し込み、理由がその会社だけ、事実を確かめた、決めつけがない、誇張がない、お願いは1つ、送信者と停止の案内、文字数に収まる
図の内容を文字で読む
  • 宛名と差し込み社名の誤りや〔 〕の残りがない
  • 理由がその会社だけ社名を隠すと通じなくなる
  • 事実を確かめた出典と日付を記録した
  • 決めつけがない相手の課題を断定していない
  • 誇張がないNo.1・必ず・最安を使っていない
  • お願いは1つ所要時間と形式を書いた
  • 送信者と停止の案内文面の最後に入っている
  • 文字数に収まる末尾まで入ったことを確かめた

とくに見落としやすいのは、宛名と差し込みです。別の会社の名前や「〔 〕」が残っていると、それだけで信用を失います。理由は社名を隠して読み、事実は出典と日付を記録します。断定や根拠のない「No.1」がないか、送信者の情報と停止の案内が末尾まで入ったかも確かめます。

慣れても点検は省きません。チームで送るなら、書いた人と別の人が確かめる流れにすると、見落としが減ります。文面の承認の流れは第11章で説明します。

やってみよう

1. 提案の理由を3社分書く

狙っている会社から3社を選び、次の表を埋めてください。最後の列で、社名を隠しても通じないかを確かめます。

2. いまの文面を3つの長さに書き分ける

自社の文面を、長め・ふつう・短文(300字以内)の3つにします。短文にも停止の案内と送信者の情報が残っているかを確かめてください。

3. チェックリストで点検する

最近送った文面を1通選び、5-9の8項目で点検し、引っかかった表現を「よい例」を参考に書き直してください。

この章のまとめ

  • 文面は、受信担当者・担当部署の人・決裁者の順に読まれる。最初の数行で用件を伝える
  • 文面は6つの部品で組み立てる。冒頭の3行で、誰が・なぜ・何の用かを示す
  • 提案の理由は「事実」と「つながり」でできている。事実は出典で確かめ、推測は推測と分かる形で書く
  • 社名を隠しても通じる理由は、まだ理由になっていない
  • 価値は相手の仕事の場面で書く。根拠には範囲と時点を添え、誇張しない
  • お願いは1つにしぼり、送信者の情報と停止の案内は必ず残す
  • 敬語は正しく控えめに。一文を短くし、AIの下書きは人が事実と表現を直す

この章の参考資料

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