フォーム営業の教科書 第4部 育てる・仕組みにする

第11章 社内ルールとトラブル対応

アポツム編集部情報は2026年11月時点

フォーム営業の事故は、1人で少しずつ送っているうちはめったに起きません。起きやすくなるのは、担当者が増えたとき、送る数が増えたとき、外注先に任せたときです。「停止を頼んだのに、別の担当者からまた届いた」「承認したはずの文面に、他社の名前が残っていた」。こうした事故の多くは、個人の不注意ではなく、仕組みのすき間から生まれます。

この章では、フォーム営業をチームで続けるための社内ルールの作り方と、トラブルが起きたときの対応を説明します。法律の考え方は第2章で整理しました。ここでは、それを毎日の手順に落とし込みます。

読み終えると、自社の運用ルールブックの目次を作り、役割と承認の流れを決められます。停止の依頼を期限内に処理する流れを組み立て、苦情やSNSでの批判に落ち着いて対応できるようになります。

11-1 運用ルールブックを作る

運用ルールブックとは、フォーム営業の決まりを1か所にまとめた社内の文書です。目的は3つあります。

  1. 判断を人に頼らない:「営業お断り」の読み方や送る回数が、担当者によって変わらないようにする
  2. 同じ基準で動いてもらう:新人にも外注先にも、同じものを渡せる
  3. 振り返りの物差しにする:事故が起きたとき、どの決まりが守られなかったのか、決まりそのものが足りなかったのかを確かめられる

目次のひな形

次の目次を出発点にして、自社に合わない項目を削り、足りない項目を加えます。右の列は、決めることの記入例です。

章決めること記入例
1 目的と基本方針何のために、どんな姿勢で送るか相手に迷惑をかけない。迷ったら送らない
2 役割と責任者誰が何をするか(11-2)運用責任者:営業部長
3 送る相手の基準狙う相手と、送らない相手「営業お断り」はリスト作成時と送信直前に確認
4 NGリストの管理置き場所、登録と削除の権限(11-4)削除は運用責任者だけ
5 同じ会社への連絡の回数と間隔の上限フォーム・電話・メールなど、方法をまたいで数える1社への連絡は方法を問わず〇週間に1回まで、通算〇回まで
6 文面の基準と承認必ず入れる情報、承認の流れ(11-3)承認後に変えたら承認し直す
7 送信の手順時間帯、1日の量、CAPTCHA の扱いCAPTCHA は人が確かめる。自動で突破しない
8 記録と保存何をどこに、何年残すか(11-8)送信記録は〇年保存
9 停止の依頼受付の経路、反映の期限(11-5)受けた当日中にNGリストへ
10 苦情とSNS対応の手順、報告の基準(11-6・11-7)法的な言葉があれば責任者へ即報告
11 送信を止める基準全体の送信を一時停止する条件停止の依頼が前回の2倍になったら止めて見直す
12 個人情報の扱いリストの項目、見られる人担当者名の列は原則つくらない
13 外注先の管理渡すもの、報告、点検(11-9)毎週、送信記録を受け取る
14 教育と点検・改訂新人の教育、点検の頻度、改訂の記録3か月ごとに見直す

5の「回数と間隔の上限」は、方法をまたいで数えることが大切です。フォームで1回、翌日に電話、さらにメールと送れば、相手から見れば短い間に3回の連絡です。ほかの方法との組み合わせ方は第12章で説明します。11の「送信を止める基準」の数字の決め方は、第9章を参考にしてください。

作る手順

  1. いまの流れを書き出す:リスト作成から返信対応まで、誰が何をしているか
  2. ひやりとした事例を集める:重複、表示の見落とし、停止の反映漏れなど
  3. 目次にそって決める:事例を防ぐ決まりから優先して書く
  4. 読み合わせる:関わる全員で読み、分かりにくい文を直す
  5. 1か月試して直す:守りにくい決まりは、手順のほうを変える

書き方のコツ

  • 短く、1つの決まりを1文で書く:読まれない分厚い文書より、1枚の表のほうが守られます
  • 理由を1行添える:理由が分かると、決まりにない場面でも判断がそろいます
  • 数字は自社で決める:記入例の〇には、自社の商材と相手の反応を見て数字を入れます
  • 改訂の日と責任者を書く:いつの版かが分からないと、古い決まりで動く人が出ます

11-2 役割を分ける

フォーム営業の仕事は、いくつかの役割に分けられます。人数が少ない会社では兼務してかまいません。ただし、文面を作る人と承認する人は、できるだけ別にします。自分の書いた文の誤りには、自分では気づきにくいからです。

図1フォーム営業の6つの役割
フォーム営業の6つの役割:運用責任者、リスト担当、文面の作成者、承認者、送信担当、受付担当
図の内容を文字で読む
  • 運用責任者ルールを決め、例外と事故を判断する
  • リスト担当送る相手を選び、NGリストと照らす
  • 文面の作成者1社ずつ提案の理由を書く
  • 承認者送る前に文面と送り先を確かめる
  • 送信担当手順どおりに送り、記録をつける
  • 受付担当返信・停止の依頼・苦情を受けて回す

役割ごとの主な仕事と、少人数のときの分け方の例です。

役割主な仕事2〜3人のときの例
運用責任者ルールの改訂、例外の判断、事故の報告を受ける営業部長
リスト担当リスト作成、「営業お断り」とNGリストの確認担当A
文面の作成者文面の下書き、提案の理由の調べもの担当A
承認者事実・表示・宛名の確認、承認の記録担当B(作成者と別の人)
送信担当送信、受付確認、送信記録担当B
受付担当返信の振り分け、停止の依頼の登録、苦情の一次対応担当A・Bの交代制

法律の判断に迷ったときの相談先(顧問弁護士など)も、ルールブックに書いておきます。誰に、どの段階で相談するかが決まっていないと、相談が遅れます。

よくある失敗

  • 受付担当が決まっておらず、停止の依頼が個人の受信箱に眠る
  • 承認者が作成者と同じ人で、差し込みの誤りが見逃される
  • 運用責任者が名ばかりで、事故の報告が上がってこない

11-3 文面の承認の流れ

承認とは、送る前に、決めた人が文面と送り先を確かめ、記録を残すことです。AIで下書きした文面も、テンプレートから作った文面も同じ流れに乗せます。

  1. 作成:作成者が下書きし、第5章の文面チェックリストで自分で点検する
  2. 申請:文面の版(例:v3)と送り先の一覧を、承認者に渡す
  3. 確認:承認者が、事実・表示・宛名・送り先を確かめる
  4. 承認の記録:文面の版、承認者、日付を記録する
  5. 送信:承認された版だけを送る

承認者が見るポイントは、次の4つにしぼると続けやすくなります。

  • 事実:提案の理由が、相手の公式サイトなどで確かめられるか
  • 表示:送信者の情報と停止の案内が入っているか
  • 宛名:差し込みの社名が正しく、別の会社名や「〇〇」が残っていないか
  • 送り先:NGリストと「営業お断り」の確認が済んでいるか

承認し直すとき

承認したあとで、文面・送り先・送信者のどれかを変えたら、承認し直します。「てにをはを直しただけ」でも例外にしません。小さな修正のつもりで、数字や社名を書きかえてしまうことがあるからです。

1社ずつ書く文面を毎回すべて承認するのが重い場合は、型(テンプレート)の部分を事前に承認します。そのうえで、差し込んだ部分(提案の理由と宛名)だけを送る前に確かめる、という2段階にします。

11-4 NGリストを管理する

NGリストに入れる会社の種類と項目の作り方は、第4章で説明しました。ここでは、作ったNGリストを、チームで漏れなく使い続けるための管理の決まりを扱います。

管理の6つの決まり

  1. 会社で1つにする:部署や担当者、外注先ごとにコピーを持たない。外注先には、同じものを見てもらうか、決めた日に最新版を渡す
  2. 登録は誰でも、削除は責任者だけ:停止の依頼を受けた人がその場で登録できるようにする。外すときは運用責任者が理由を確かめる
  3. 会社名だけで照らさない:法人番号やサイトのドメインで照らし、「株式会社」の有無などの表記の揺れに備える
  4. 照らすのは2回:リストを作るときと、送る直前
  5. 変更の履歴を残す:いつ、誰が、なぜ登録・削除したかを残す
  6. 方法をまたいで使う:フォームだけでなく、電話・メール・手紙の担当も同じリストを見る

外すのはどんなときか

停止の依頼で登録した会社は、原則として外しません。外すのは、相手から改めて問い合わせや取引の相談があったときなど、相手の意思がはっきり変わったときだけです。そのときも、運用責任者が経緯を確かめ、履歴に残します。

「1年たったから、もう一度送ってもよいだろう」という判断はしません。相手から見れば、約束を破られたのと同じだからです。

11-5 停止の依頼を処理する流れと期限

停止の依頼は、受け方と反映の速さで、会社の信用が決まります。法律との関係は第2章、依頼への返事の書き方は第8章で説明しました。ここでは、社内での処理の流れと期限を決めます。

図2停止の依頼を処理する流れ
停止の依頼を処理する流れ:受け付ける、NGリストに登録、予定の送信を止める、返事をする、反映を確かめる
図の内容を文字で読む
  1. 受け付ける経路を問わず、日時と会社名を記録
  2. NGリストに登録理由は「停止の依頼」。範囲は会社全体
  3. 予定の送信を止める予約済み・ほかの施策・外注先の分も
  4. 返事をする受け付けたことだけを短く伝える
  5. 反映を確かめる翌週、送信記録と照らして漏れを点検

反映までの期限を決める

特定電子メール法や特定商取引法は、拒否の連絡を受けたあとの送信を禁じていますが、「何日以内に反映する」という日数は定めていません。そのため、期限は社内で決めます。基準は「次の送信より前に、確実に反映する」ことです。次の表の期限は、法律の定めではなく記入例です。

作業期限(記入例)理由
NGリストへの登録受けた当日中(遅くとも翌営業日)翌日の送信に間に合わせる
予約済みの送信の停止登録と同時登録しても予約が残れば届く
外注先・他部署への連絡受けた当日中自社名の送信をすべて止める
相手への返事1営業日以内受け付けたことを早く伝える
反映の確認毎週1回漏れを早く見つける

参考までに、米国の CAN-SPAM 法では、営業メールの停止の依頼を10営業日以内に反映することが求められています(米国連邦取引委員会の手引き)。米国の決まりなので国内のフォーム営業に直接は関わりませんが、本書の例はこれよりかなり短くしています。

記録する項目

項目記入例
受けた日時2026年11月5日 14:20
会社名・法人番号・ドメイン株式会社△△、法人番号、example.com
受けた経路フォームの返信メール
依頼の内容「今後のご案内は不要です」
範囲会社全体
登録・停止の日時と担当11月5日 15:00 担当A
外注先への連絡11月5日 15:10 メールで連絡、受領の返事あり
返事の日時11月5日 15:30

依頼をくれた人の名前や連絡先は、返事に必要な範囲だけ記録し、見られる人を限ります。

迷いやすい場面

  • 範囲がはっきりしない:「この件は不要」とだけ書かれていても、会社全体として扱う
  • グループ会社:依頼をくれた会社を登録する。グループ全体を求められたら、その範囲で登録する
  • 電話で口頭の依頼:受けた人がその場で記録し、登録まで済ませる
  • 苦情を伴う依頼:停止の処理と並行して、11-6の苦情の手順に回す
  • 誤って送ってしまった:すぐにおわびし、どこで漏れたかを調べる(予約の残り、別のリスト、表記の揺れなど)

11-6 苦情への対応の手順と例文

苦情は、相手が時間を使って知らせてくれた、改善の手がかりです。特定電子メール法は、特定電子メールの送信者に、苦情や問い合わせへ誠意をもって対応することを求めています(第9条)。フォーム営業でも同じ姿勢で臨みます。返信の種類ごとの最初の返し方は第8章で説明しました。ここでは、社内での対応の手順を決めます。

対応の6つの手順

  1. 受け止める:受付担当が、反論せずに内容を記録し、運用責任者に報告する
  2. 送信を止める:調べる前に、その会社をNGリストに登録する
  3. 事実を調べる:送信記録で、いつ、誰が、どの文面を、どのフォームに送ったかを確かめる
  4. おわびと説明:分かった事実をもとに、おわびと今後の対応を伝える
  5. 原因と再発防止:なぜ起きたかを調べ、ルールや手順を直す
  6. 記録と共有:経緯と対応を残し、チームで共有する

苦情の記録には、受けた日時と経路、相手の会社名、苦情の内容(相手の言葉のまま)、調べた事実、原因、返事の日時と内容、再発防止の対応、報告した相手を残します。

一次の返事は、受けた日のうちに送るのが目安です。調べるのに時間がかかるときは、「事実を確かめて、〇日までにご連絡します」と先に伝えます。

すぐに責任者へ上げる苦情

次のような場合は、受付担当だけで対応せず、運用責任者に即日報告します。必要に応じて弁護士に相談します。

  • 法的な措置、損害の賠償、料金の請求などの言葉がある
  • 弁護士や官公庁から連絡が来た
  • 個人情報の開示や利用の停止を求められた
  • 同じ会社に、くり返し送っていたことが分かった
  • SNS などに投稿されている(11-7)

やってはいけない対応

  • 「法律上は問題ありません」と言い返す
  • 「営業お断り」の表示が分かりにくかった、など相手のせいにする
  • おわびの返事に、資料や別の提案を添える
  • 担当者個人の判断で、事実と違う説明をする

おわびの例文

調べたあとに送る、ていねいなおわびの例です。苦情を受けた直後の短い返事は、第8章の例文を使ってください。

例文苦情へのおわび(事実を確かめたあとに送る文)
株式会社〇〇
総務部 佐藤さま

株式会社△△で営業部の責任者をしております、鈴木と申します。
このたびは、当社からの営業のご連絡により、ご迷惑とご不快の念をおかけしましたこと、心よりおわび申し上げます。

社内で確認いたしましたところ、〇月〇日と〇月〇日の2回、別々の担当者から貴社の問い合わせフォームへご案内をお送りしておりました。担当者ごとに送り先を管理していたため、重複に気づくことができませんでした。

貴社につきましては、本日、当社の送信停止の一覧に登録いたしました。今後、当社から営業のご連絡をお送りすることはございません。
あわせて、送り先の一覧を会社で1つにまとめ、送る前に必ず照らし合わせる手順に改めました。

ほかにお気づきの点がございましたら、下記までご連絡ください。
重ねて、深くおわび申し上げます。

株式会社△△ 営業部 部長 鈴木一郎
住所:東京都〇〇区〇〇1-2-3
電話:03-0000-0000
メール:info@example.com

おわびの文では、次の3つを必ず伝えます。何が起きたか(事実)、今後どうするか(送信の停止)、同じことを起こさないために何を変えたか(再発防止)です。調べて分からなかったことを、推測で書かないようにします。

一方で、「法律に違反していました」といった法的な評価や、賠償の約束は書きません。おわびするのは、確かめた事実と、相手にかけた迷惑です。法的な言葉を含む苦情への返事は、送る前に運用責任者が確かめ、必要に応じて弁護士に見てもらいます。

11-7 SNSで批判されたときの対応

フォーム営業を受けた会社や担当者が、SNSに「こんな営業が来た」と投稿することがあります。投稿は、文面の画像つきで広まることもあります。慌てて反応すると、かえって話が大きくなります。手順を決めておき、落ち着いて動きます。

図3SNSで批判されたときの動き
SNSで批判されたときの動き:気づいた直後、当日、当日〜翌日、1〜2日以内、必要なとき、1か月後
図の内容を文字で読む
  1. 気づいた直後
    責任者に報告し、該当の送信を止める担当者は個人で反応しない
  2. 当日
    送信記録で事実を確かめる自社の送信か、なりすましか
  3. 当日〜翌日
    対応の方針を決める責任者・広報、必要なら弁護士
  4. 1〜2日以内
    相手に直接おわびする連絡先が分かる場合
  5. 必要なとき
    公式の説明を出す事実・おわび・再発防止
  6. 1か月後
    振り返り、ルールを直す同じ火種がないか点検

手順のポイント

  1. 気づく仕組みを持つ:自社名やサービス名での検索を、週に1回など決まった頻度で行う
  2. まず止める:該当の会社をNGリストに登録する。原因が分かるまで、同じ文面や同じリストからの送信を止める
  3. 事実を確かめる:投稿の内容と送信記録を照らす。自社の送信でない場合(自社の名前をかたる送信)もありうるので、決めつけない
  4. 直接のおわびを優先する:相手の会社が分かるなら、SNSで返事をするより、その会社に直接連絡しておわびする
  5. 公式の説明は必要なときだけ:話題が広がり、ほかの受け手にも影響が出ているときに、事実・おわび・対応・再発防止を簡潔に出す
  6. 振り返る:なぜ起きたかを調べ、ルールブックを直す

やってはいけないこと

  • 担当者が個人のアカウントで反論したり、言い訳したりする
  • 事実を確かめる前に「当社ではありません」と否定する
  • 投稿した人を特定しようとする
  • 投稿の削除を感情的に求める(削除を求めるかどうかは、弁護士に相談して決める)

公式の説明の例

例文公式サイトに出すお知らせ(SNSで指摘を受けたとき)
当社からの営業のご連絡についてのおわび

当社が〇月〇日から〇月〇日に問い合わせフォームからお送りした営業のご連絡の一部で、同じ会社へ重ねてお送りしていたことが分かりました。ご迷惑をおかけした皆さまに、深くおわび申し上げます。

現在、該当のご連絡を止め、送り先の管理の方法を見直しております。今後は、送り先の一覧を会社で1つにまとめ、送る前に必ず照らし合わせます。

当社からの今後のご連絡が不要な場合は、下記のページからお知らせください。以後、お送りすることはございません。
https://example.com/optout

〇年〇月〇日
株式会社△△
住所:東京都〇〇区〇〇1-2-3
お問い合わせ:03-0000-0000(平日10時〜17時)

お知らせには、分かっている事実だけを書きます。原因を調べている最中なら、「調べている」と書き、分かった時点で追記します。

11-8 記録の保存と新人の教育

何を、どのくらい残すか

送信記録のつけ方は第7章で説明しました。ここでは、残す記録の種類と保存の期間を決めます。フォームからの送信の記録について、何年残せという法律の定めは、筆者が調べた範囲では見当たりません。そこで、関係する法令の期間を参考に、社内で期間を決めます。

表のうち「記入例」は本書の例で、法律の義務ではありません。「法令」とある2つは、その法令が当てはまる場合に守る最低限の期間です。

記録保存の期間理由・根拠
送信記録(日時・URL・全文・結果)3年(記入例)苦情や問い合わせに事実で答えるため
文面の承認の記録送信記録と同じ(記入例)何を承認して送ったかを示すため
NGリストと変更の履歴運用を続ける限り(記入例)停止の依頼を守り続けるため
停止の依頼・苦情の記録運用を続ける限り(記入例)経緯を確かめられるようにするため
名簿を買ったときの確認の記録原則3年(法令)個人情報保護法施行規則第25条
メールの送信に同意を得た記録最後に送った日から1か月(法令)特定電子メール法施行規則第4条

通信販売の電子メール広告をする場合は、承諾の記録を、広告をした日から3年間保存する決まりもあります(特定商取引法施行規則第30条)。

担当者の名前など個人の情報は、使う必要がなくなったら消すよう努める決まりがあります(個人情報保護法第22条)。記録を残すことと、必要以上の個人の情報を持たないことを両立させるため、記録には会社の情報を中心に残します。記録を見られる人を限り、持ち出しを禁じることもルールブックに書きます(安全管理措置、第23条)。

新人の教育

新しい担当者には、送る前に次の順で教えます。

  1. 読む:ルールブックと、本書の第2章を読む
  2. 見る:先輩の送信を横で見て、「営業お断り」の確かめ方と記録のつけ方を学ぶ
  3. 試す:過去の判断例(送った・送らなかったフォーム)を見て、送るかどうかを答える。答えを先輩と照らし合わせる
  4. 承認つきで送る:最初の数十社は、全件を承認者が確かめる
  5. 独り立ち:運用責任者が、記録と判断を確かめてから任せる

「営業お断り」の判断は、言葉で教えるより、実際の表示を見て練習するほうが身につきます。迷いやすかった表示を集めて、社内の教材にしておきましょう。

11-9 定期の点検と外注先の管理

定期の点検

ルールは、作っただけでは守られているか分かりません。月に1回など頻度を決めて、記録をもとに点検します。

図4毎月の点検項目
毎月の点検項目:停止の反映漏れ、反映までの日数、承認なしの送信、重複の送信、表示の漏れ、苦情の中身、外注先の報告、見られる人
図の内容を文字で読む
  • 停止の反映漏れ登録日のあとに送った記録がないか
  • 反映までの日数期限内に登録できたか
  • 承認なしの送信承認の記録がない送信がないか
  • 重複の送信方法をまたいで上限を超えていないか
  • 表示の漏れ送信者の情報と停止の案内があるか
  • 苦情の中身件数と、同じ原因がくり返していないか
  • 外注先の報告記録が期日どおり届いているか
  • 見られる人退職者などの権限が残っていないか

点検で見つかった問題は、担当者を責めるのではなく、手順のどこで防げなかったかを考えます。結果は運用責任者が記録し、3か月に1回など決めた頻度でルールブックを見直します。停止の依頼や苦情の数の推移の見方は、第9章も参考にしてください。

外注先の管理

外注先を選ぶときの基準と、契約の前に聞くことは第10章で説明しました。ここでは、契約したあとの管理を扱います。自社の名前で送られる以上、評判への影響は自社に返ってきます。

  • 始める前に渡す:ルールブック、最新のNGリスト、承認済みの文面、停止の依頼の受付方法
  • 停止の依頼をつなぐ:外注先が受けた依頼を、当日中に自社へ知らせてもらう。自社が受けた依頼も、当日中に外注先へ伝える
  • 報告を受ける:送信記録(日時・送り先・文面の版・結果)を、週に1回など決めた頻度で受け取る
  • 点検する:受け取った記録を、自社のNGリストと照らす。月に1回の点検に外注先の分も含める
  • 個人の情報を渡すなら:委託先として監督する必要があります(個人情報保護法第25条)。再委託の可否、目的外の利用の禁止、終了後の返却や消去を契約で決めておく
  • 終わるとき:渡したリストの返却か消去を確かめ、記録を受け取る

やってみよう

課題1 ルールブックの1ページ版を作る

11-1の目次から自社に必要な項目を選び、決まりを1文ずつ書きます。とくに、回数と間隔の上限と、停止の依頼の期限には数字を入れてください。次は記入例です(数字は例です)。

項目自社の決まり(記入例)
基本方針相手に迷惑をかけない。迷ったら送らない
回数と間隔の上限方法を問わず、1社への連絡は1か月に1回まで、通算3回まで
承認型は運用責任者、差し込み部分は作成者と別の人が確かめる
停止の依頼受けた当日中にNGリストへ登録し、予約と外注先の分も止める
苦情一次の返事は当日中。法的な言葉があれば責任者へ即報告
点検毎月第1営業日に、11-9の8項目を点検する

課題2 停止の依頼の訓練をする

運用責任者が、自社の停止用ページや返信で、架空の会社名を使った停止の依頼を送ります。担当者には知らせず、ふだんどおりに処理されるかを確かめます。

確かめること結果(記入例)直すこと(記入例)
受けてからNGリストに入るまで3時間なし
予約済みの送信が止まったか1件残っていた手順に「予約の確認」を足す
外注先に伝わったか翌日に伝わった当日中の連絡を徹底する
返事を送ったか1営業日以内に送ったなし

訓練が終わったら、架空の会社をNGリストから外し、その記録も残します。

この章のまとめ

  • 運用ルールブックは、判断を人に頼らず、新人や外注先と同じ基準で動くための道具。短く、理由を添えて書く
  • 1社への連絡の回数と間隔の上限は、フォーム・電話・メールなど方法をまたいで数える
  • 文面を作る人と承認する人は分ける。承認後に変えたら承認し直す
  • NGリストは会社で1つ。登録は誰でも、削除は責任者だけ。送る直前にも照らす
  • 停止の依頼は、次の送信より前に、予約と外注先の分まで反映する。期限を数字で決める
  • 苦情は、止める・調べる・おわびする・直す・記録するの順で。SNSでは直接のおわびを優先する
  • 記録の保存期間を決め、毎月点検し、外注先の分も同じ物差しで確かめる

この章の参考資料

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