フォーム営業の教科書 第1部 フォーム営業を知る

第1章 フォーム営業とは何か

アポツム編集部情報は2026年11月時点

「フォーム営業を始めたいが、何をすることなのか、うまく説明できない」。「テレアポやメールと、どこが違うのか分からない」。新規開拓の担当になった人から、よく聞く声です。言葉は知っていても、送った文面が相手の会社でどう扱われるのかまで知っている人は、多くありません。

この章では、まずフォーム営業の定義と仕組みを整理します。次に、この方法が注目される背景を、統計や調査で確かめます。そのうえで、テレアポ・メール・手紙・SNS・展示会・広告・紹介と比べ、向く商材と向かない商材を見分ける目を養います。

読み終えるころには、自社でフォーム営業をやるべきかどうかを判断できます。やるなら何から考えればよいかも、自分の言葉で説明できるようになります。章の最後には、この本全体の地図も示します。

1-1 フォーム営業の定義

フォーム営業(問い合わせフォーム営業)とは、企業のサイトにある問い合わせフォームから、営業・提案の連絡を送ることです。相手の会社が公開している窓口に、自社の商品やサービスの案内を入力して届けます。

3つの要素で考える

この定義には、3つの要素が含まれています。

  1. 相手は企業である:個人のお客様ではなく、法人に向けた提案です。
  2. 入口は、相手が公開した窓口である:担当者のメールアドレスを探して送るのではありません。
  3. 中身は営業・提案である:見積もりの依頼や商品の質問ではなく、こちらから何かを提案する連絡です。

とくに大切なのは3つ目です。問い合わせフォームは、本来はお客様や取引先が、質問や相談をするための入口です。フォーム営業は、その入口を「提案のために」使わせてもらう行為だと言えます。だからこそ、相手の負担を小さくし、ルールを守ることが前提になります。

似た言葉との違い

フォーム営業は、次のような言葉と混同されがちです。

言葉意味フォーム営業との違い
営業メール担当者のメールアドレスに送る提案宛先のアドレスを知っている必要がある
フォームDMフォーム営業の別の呼び方同じものを指すことが多い
一斉送信同じ文面を大量に送ること送り方の一つ。この本はすすめない
問い合わせお客様が質問・相談をすること向きが逆(相手から自社へ)

この本で「フォーム営業」と言うときは、1社ずつ理由を考えて送る提案を指します。同じ文面を機械的に大量に送るやり方は、相手の迷惑になりやすく、成果にもつながりにくいので扱いません。

フォーム営業に含めないこと

次のような行為は、フォーム営業とは呼びません。してはいけないことです。

  • 「見積もり依頼」「資料請求」など、営業ではない種別を選んで装う
  • 「営業お断り」の表示があるフォームに送る
  • 採用の応募専用や、個人のお客様向けの窓口に送る
  • 送信者の情報(会社名・担当者名・連絡先)を書かずに送る

それぞれの理由と、正しい送り方は第7章で説明します。法律との関係は第2章で整理します。

1-2 送った文面は、誰に、どう届くか

フォーム営業の成果を大きく左右するのは、文面を最初に読む人です。その人を知るには、フォームの裏側で何が起きているかを知っておく必要があります。

フォームの裏側の仕組み

問い合わせフォームの「送信」を押すと、多くの場合、次のことが起きます。

  1. 入力した内容が、相手のサイトの仕組み(サーバー)に送られる
  2. 仕組みが、決められたメールアドレスに内容を転送する。または、管理画面に一覧として保存する
  3. 送った側の画面に「受け付けました」と出る。自動返信のメールが届くこともある

2の転送先は、会社によってさまざまです。代表のメールアドレス、総務や広報の共有アドレス、問い合わせを管理する仕組みなどがあります。サイトの運営を外の会社に任せていて、まずそこに届く場合もあります。

ここで大事なのは、自動返信のメールは「読まれた」ことを意味しないという点です。自動返信は、仕組みが受け付けたことを知らせるだけです。人が読んだかどうかは、送った側からは分かりません。

最初に読むのは窓口の担当者

転送された文面を最初に読むのは、多くの場合、問い合わせの窓口を任された人です。総務、広報、営業事務、カスタマーサポートの担当者などです。この人は、あなたの提案を採用するかどうかを決める立場にないことがほとんどです。

窓口の担当者は、届いた連絡を見て、おおむね次のように仕分けます。

  • お客様からの問い合わせ:すぐに担当部署へ回す
  • 取引先からの連絡:関係する人へ回す
  • 営業・提案:関係がありそうなら担当部署へ回す。なければそのままにする
  • 迷惑な連絡:削除する。送り主に今後の連絡を断ることもある

つまり、フォーム営業の文面は、決める人に読まれる前に、仕分ける人に読まれるのです。仕分ける人が数秒で「誰が・何の用件で・どの部署向けに」送ってきたのか分からなければ、文面は先へ進みません。

図1フォームの文面が担当者に届くまで
フォームの文面が担当者に届くまで:送信する、窓口に届く、仕分けられる、転送される、検討される
図の内容を文字で読む
  1. 送信する送信者の情報と文面を入力する
  2. 窓口に届く共有アドレスや管理画面に入る
  3. 仕分けられる窓口の担当者が数秒で判断する
  4. 転送される関係がありそうな部署へ回る
  5. 検討される担当部署や決裁者が読む

社内で回されるときに起きること

担当部署に転送されたあとも、文面がそのまま読まれるとは限りません。転送のメールに「こういう営業が来ていますが、どうしますか」と一言添えられ、上司の判断を待つこともあります。

このとき、文面が長すぎたり、何の提案か分からなかったりすると、「とりあえず保留」になりがちです。逆に、冒頭の数行で用件と相手にとっての意味が伝われば、検討の場にのせてもらえます。文面の組み立て方は、第5章でくわしく説明します。

よくある誤解

  • 「社長に直接届く」:小さな会社では社長が読むこともあります。しかし多くの会社では、窓口の担当者が先に読みます。
  • 「送れば必ず読まれる」:受け付けの画面が出ても、読まれる保証はありません。連絡が多く届く会社では、営業の連絡は後回しにされがちです。
  • 「返信がない=断られた」:転送されて、検討中のこともあります。返信の有無だけで判断せず、記録を残して見直します。数字の見方は第9章で扱います。

1-3 フォーム営業が注目される背景

フォーム営業そのものは、新しい方法ではありません。ただ、相手に連絡するときの条件は、ここ数年で変わりました。働き方の変化と、買い手の行動の変化です。ここでは、統計で確かめられることと、そこからの推論を分けて見ていきます。

会社にいない働き方が広がった

総務省の「通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業の割合は、令和元年には20.2%でした。それが、令和2年には47.5%へ増えました。その後は5割前後で推移し、令和7年の調査では50.1%でした(総務省『令和7年通信利用動向調査』)。この調査の対象は、常用雇用者が100人以上の企業です。

図2テレワーク導入企業の割合(常用雇用者100人以上)
テレワーク導入企業の割合(常用雇用者100人以上):令和元年、令和2年、令和3年、令和4年、令和5年、令和6年、令和7年
図の内容を文字で読む
  • 令和元年20.2%
  • 令和2年47.5%
  • 令和3年51.9%
  • 令和4年51.7%
  • 令和5年49.9%
  • 令和6年47.3%
  • 令和7年50.1%

導入の度合いは、業種や会社の規模で大きく違います。同じ調査の令和7年の結果では、情報通信業が92.8%、金融・保険業が81.9%でした。一方、運輸・郵便業は32.5%です。資本金が50億円以上の企業では88.3%、1,000万円未満の企業では19.5%でした。

働く人の側の数字もあります。国土交通省の「テレワーク人口実態調査」は、令和7年10月に、働く人4万人にインターネットで行った調査です。会社などに雇われて働く人のうち、テレワークをしたことがある人は25.2%でした。首都圏では、令和2年度から3割を超える水準が続いています(国土交通省『令和7年度テレワーク人口実態調査』)。業種別では、情報通信業が74.1%と高く、宿泊業・飲食業は6.0%でした。

「電話がつながりにくい」は推論として読む

ここから言えるのは、オフィスにいない時間がある働き方が、一定の割合で定着したということです。そうなると、代表電話にかけても、担当者が席にいない場面は増えると考えられます。

ただし、「電話がつながりにくくなった」ことを直接はかった公的な統計は、調べた範囲では見つかりませんでした。そのため、この本では「つながりにくくなったと考えられる」という推論として扱います。自社にテレアポの記録があれば、担当者と話せた割合の変化を見てください。それが、いちばん確かな根拠になります。

一方で、文章の連絡は、相手がどこで働いていても届きます。フォームから届いた文面は、共有アドレスや管理画面を通じて、在宅で働く担当者にも回せます。ここに、フォーム営業が選ばれる理由の一つがあります。

業種による差にも注意が必要です。テレワークの導入率が高い業種ほど、電話より文章のほうが届きやすいと考えられます。反対に、店舗や現場で働く人が多い業種では、事情が違います。自社が狙う業種の働き方を想像してから、連絡の方法を選びましょう。

買い手が自分で調べてから売り手に会う

もう一つの変化は、買い手の行動です。HubSpot Japan は2026年7月、法人向けの購買に関わった1,573人への調査を公表しました。この調査では、売り手に接触する時点で、検討がどこまで進んでいることが多いかを聞いています。

まず、全体の9.0%は「売り手に接触することはない」と答えました。残りの1,431人のうち63.5%は、接触の時点で、複数の候補を挙げる段階か、それより先まで進んでいました(HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」)。

同じ調査では、回答者が直近1年に関わった購買のうち、関わりが最も大きかった1件についても聞いています。社内で関わった人が、自分を含めて5人以上だったケースは46.9%でした。2つ以上の候補を比べたケースは80.3%です。提案を受けた会社が、社内の複数の人で、複数の候補を比べながら決めている様子がうかがえます。

この調査は、マーケティングや営業の仕組みを提供する会社が企画したインターネット調査です。対象は、従業員50人以上の企業に勤める人です。業種や商材で事情は変わるため、数字をそのまま一般化せず、「傾向」として読むのが安全です。

それでも、ここから読み取れることがあります。買い手は、売り手から声がかかる前に、自分で調べて候補を絞りがちです。売り手の側は、候補に入れてもらうきっかけをつくる必要があります。フォーム営業は、相手が調べ始める前に「こういう選択肢があります」と知らせる手段になり得ます。

そして、文面を読んで関心を持った相手は、次にあなたの会社のサイトを見ると考えられます。文面だけでなく、サイトや資料まで含めて評価されるということです。サイトや資料との連携は、第12章で扱います。

文章で「理由」を届けられる

働き方と買い手の行動が変わると、短い電話で用件を伝えるより、文章で落ち着いて理由を伝えることの価値が上がります。フォームの文面なら、「なぜ御社に連絡したのか」「何が役に立つのか」を、相手の都合のよいときに読んでもらえます。社内で転送するときも、文章のほうが正確に伝わります。

ただし、これは「フォームなら何でも読まれる」という意味ではありません。同じように考える会社が増えれば、受け手に届く営業の連絡も増えます。だからこそ、1社ずつ理由のある提案が求められるのです。

1-4 ほかの新規開拓の方法と比べる

フォーム営業を正しく使うには、ほかの方法との違いを知っておくことが欠かせません。ここでは、次の5つの軸で比べます。

  • 費用:何にお金がかかるか
  • 手間:1件あたり、何に時間がかかるか
  • 届く相手:最初に誰に届くか
  • 相手の負担:受け取る側に、どんな負担をかけるか
  • 向く場面:どんなときに力を発揮するか

フォーム営業・テレアポ・営業メール

まずは、自分から相手に連絡する3つの方法を比べます。

図3自分から連絡する3つの方法
自分から連絡する3つの方法:費用、手間、届く相手、相手の負担、向く場面
図の内容を文字で読む
項目フォーム営業テレアポ営業メール
費用主に人件費主に人件費主に人件費
手間調べて書いて入力するかけ直しと取り次ぎ宛先を集めて書く
届く相手公開窓口の担当者電話に出た人宛先の担当者本人
相手の負担読む時間を選べる手を止めて応じる読む時間を選べる
向く場面理由を文章で伝えるその場で反応を聞くすでに接点がある

3つとも、費用の中心は人の時間(人件費)です。違いが出るのは、手間のかかる場所と、相手の負担です。

テレアポは、相手の反応をその場で聞けるのが最大の強みです。困りごとを聞き、質問に答えながら話を進められます。一方で、相手は手を止めて電話に出なければなりません。代表電話では、受付の人が取り次ぐ手間もかかります。担当者が不在なら、かけ直しも必要です。

営業メールは、担当者本人に直接届くのが強みです。ただし、担当者のメールアドレスを知っていることが前提です。名刺交換をした相手など、すでに接点がある場合に向いています。広告や宣伝のメールには、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)の決まりがあります。くわしくは第2章で説明します。

フォーム営業は、宛先を知らなくても、相手が公開した窓口に届けられます。その代わり、最初に読むのは窓口の担当者です。決める人に届くまでに、1段階あります。

手紙・DM、SNS、展示会、広告、紹介

ほかの方法も、同じ5つの軸で見てみます。

手紙・DM(郵送)

  • 費用:印刷代と郵送料。定形郵便物は50g以内で110円です(日本郵便「国内の料金表(手紙・はがき)」)。
  • 手間:印刷・封入・発送。宛先の部署や役職も調べる。
  • 届く相手:宛名の人。ただし、総務などが先に開けることもある。
  • 相手の負担:小さい。開けるかどうかを相手が決められる。
  • 向く場面:狙う会社を絞り、決める立場の人に印象を残したいとき。

SNS

  • 費用:主に人件費。広告を使えば広告費。
  • 手間:日ごろの発信と、つながりづくり。
  • 届く相手:アカウントを持つ個人。
  • 相手の負担:小さい。ただし、いきなりの売り込みは嫌がられやすい。
  • 向く場面:人柄や考え方が決め手になる商材。担当者の顔を見せたいとき。

展示会

  • 費用:出展料、ブースの設営、配る資料、人の時間。まとまった額が先にかかる。
  • 手間:準備と当日の対応、終わったあとのフォロー。
  • 届く相手:会場に来た、関心のある人。
  • 相手の負担:小さい。相手が自分から足を運んでいる。
  • 向く場面:実物を見せたい商材。業界の人に一度に会いたいとき。

広告

  • 費用:広告費と、案内するページを作る費用。
  • 手間:設定と、結果を見ながらの調整。
  • 届く相手:検索したり、関連するサイトを見たりしている人。
  • 相手の負担:小さい。
  • 向く場面:すでに探している人がいる商材。

紹介

  • 費用:小さい。お礼などにかかる程度。
  • 手間:日ごろの関係づくり。
  • 届く相手:紹介者が信頼している人。
  • 相手の負担:小さい。話を聞いてもらいやすい。
  • 向く場面:信頼が決め手になる商材。ただし、数を自分で増やしにくい。

比べて分かるフォーム営業の位置

並べてみると、フォーム営業の位置がはっきりします。

  • テレアポと同じく、狙った会社に自分から連絡できる
  • メールと同じく、相手が読む時間を選べる
  • 展示会や広告と違い、まとまった費用を先に払わなくても始められる
  • 紹介と違い、数や時期を自分で計画できる

反対に、フォーム営業が苦手なこともあります。その場で相手の反応を聞くことはできません。決める人に直接届けるのも難しい方法です。相手がまだ課題に気づいていなければ、読まれても後回しになります。

どれか1つが正解ということはありません。フォーム営業を軸にしながら、ほかの方法で弱いところを補うのが現実的です。組み合わせ方は、第12章で説明します。

1-5 メリットとデメリット

ここまでの内容を、メリットとデメリットとして整理します。

メリット

  1. 公式の窓口に届けられる:展示会や紹介の接点がない会社にも、サイトがあれば連絡できます。
  2. 相手の時間を奪わない:相手は手の空いたときに読めます。電話のように作業を止めさせません。
  3. 1社ずつ理由を書ける:会社ごとに「なぜ御社か」を書き分けられます。この理由が、窓口の担当者が転送するかどうかを左右します。
  4. 記録が残る:いつ、どの会社に、何を送ったかを、全文で残せます。あとから見直し、改善に使えます。
  5. 小さく試せる:数十社から始めて、反応を見ながら狙う会社や文面を変えられます。

デメリット

  1. 決める人に届くまで時間がかかる:窓口の担当者を経由するため、返信まで日数がかかることがあります。
  2. 読まれずに終わることが多い:受け付けられても、読まれるとは限りません。
  3. 1社ごとの手間が大きい:会社を調べ、理由を書き、フォームに入力するには時間がかかります。
  4. 送り方を誤ると、評判を落とす:「営業お断り」を無視したり、同じ会社に何度も送ったりすると、苦情やSNSでの批判につながります。
  5. ルールの理解が必要:送ってよい相手か、何を書くべきかには、法律やサイトの利用規約が関わります。第2章で説明します。

手間を試算する

3つ目のデメリットは、思っている以上に大きくなります。たとえば、1社あたり、会社を調べるのに5分、理由を書くのに5分、入力と記録に3分かかるとします。

  • 1社あたり:5分 + 5分 + 3分 = 13分
  • 100社では:13分 × 100社 = 1,300分(約22時間)

これは、仮の時間を置いた試算です。実際の時間は、商材や慣れで変わります。まずは自社で10社ほど送ってみて、1社にかかった時間をはかってください。作業の分け方や、自動にしてよいところは、第10章で扱います。

1-6 向く商材と向かない商材

フォーム営業は、どんな商材にも向くわけではありません。始める前に、自社の商材との相性を確かめましょう。

向く商材の条件

次の条件に多く当てはまるほど、フォーム営業に向いています。

  • 相手が法人である:個人のお客様向けの商材には使いません。
  • 相手の課題を文章で説明できる:「〇〇でお困りではありませんか」と一文で言える。
  • 提案のきっかけを外から見つけられる:出店、採用の強化、新サービスの発表など、相手の動きがサイトや報道で分かる。
  • 1社との取引が手間に見合う:1社ずつ調べて書く手間をかけても、取引が続けば元が取れる。
  • 狙う会社がある程度の数ある:数社しかないなら、手紙や紹介で1社ずつ近づくほうがよい。
  • 最初の一歩を軽くできる:資料の送付、無料の診断、短いオンラインの説明など、相手が気軽に応じられる入口を用意できる。

向かない、または工夫が必要な商材

  • 個人のお客様向けの商材:フォーム営業の対象ではありません。
  • 1回きりで、単価がとても低い商材:1社あたりの手間に見合わないことが多くあります。
  • 相手がまだ課題に気づきにくい、新しい種類の商材:文面だけでは伝わりにくいので、セミナーや記事で知ってもらう工夫が要ります。
  • 表現に決まりが多い商材:医療・健康・金融などは、宣伝の表現に業界ごとの法律の制限がかかることがあります。送る前に、そのルールを確かめてください。

例で考える

商材との相性を点数で確かめる方法は、この章の「やってみよう」で紹介します。狙う顧客像(ICP)の作り方は、第3章でくわしく説明します。

1-7 うまくいく会社と、いかない会社の考え方の違い

同じフォーム営業でも、成果が出る会社と出ない会社があります。違いは、送る技術よりも、考え方にあることが多いものです。

場面うまくいかない会社うまくいく会社
目的たくさん送ること商談をつくること
相手の選び方送れる会社に全部送る役に立てる会社を選ぶ
文面社名だけ差し替える1社ずつ理由を書く
断られたとき気にせず送り続けるすぐに止めて記録する
数字送った数だけ見る受付・返信・商談まで見る
体制担当者まかせルールを決めて共有する

「送る」ではなく「会話を始める」

うまくいく会社は、フォーム営業を「送る作業」とは考えません。相手との会話を始めるための、最初の一通と考えています。そのため、返信が来たときの対応や、日程を決める方法まで、送る前に準備しています。

うまくいかない会社は、送った数を成果と考えがちです。しかし、送った数が増えても、商談が増えなければ意味がありません。むしろ、苦情や停止の依頼が増えるおそれがあります。

相手の立場で考える

うまくいく会社は、受け取る側の立場で文面を見直します。「窓口の担当者は、この文面を数秒で仕分けられるか」「転送された部署の人は、自社に関係があると思えるか」と問います。

フォーム営業は、相手の会社の時間を少しだけ借りる行為です。借りた時間に見合う情報を渡せているかどうかが、成果を分けます。

一度の結果で判断しない

うまくいく会社は、最初から大きな成果を期待しません。小さく試し、数字を見て、狙う会社や文面を直します。受付確認数、返信数、商談数を記録し、どこで止まっているかを見ます。数字の定義と改善の方法は、第9章で説明します。

断りを大切な情報として扱う

うまくいく会社は、断りの返信や停止の依頼を、失敗とは考えません。「今は必要ない」「担当が違う」という返事は、狙う会社や時期の見直しに使える情報です。停止の依頼にはすぐに応じ、NGリストに加えます。この姿勢が、長く続けられるかどうかを決めます。返信への対応は第8章、社内での処理の流れは第11章で説明します。

1-8 この本の地図

最後に、この本全体の流れを示します。フォーム営業は、次の順番で組み立てると迷わずに進められます。戦略 → リスト → 文面 → 送信 → 返信・商談 → 改善 → 仕組み化、の順です。

図4この本の地図(第3章〜第12章)
この本の地図(第3章〜第12章):戦略を決める、リストを作る、文面を書く、送る、返信から商談へ、改善し仕組みにする
図の内容を文字で読む
  1. 戦略を決める第3章 誰に・何を・なぜ今
  2. リストを作る第4章 送る会社を選んで整える
  3. 文面を書く第5章 書き方と第6章 例文集
  4. 送る第7章 送信の実務
  5. 返信から商談へ第8章 返信対応と商談
  6. 改善し仕組みにする第9〜12章 数字・ツール・ルール

第1部 フォーム営業を知る

  • 第2章 フォーム営業の法律とルール:特定電子メール法、特定商取引法、個人情報保護法などとの関係を整理します。「営業お断り」の表示の意味や、停止の依頼への対応も扱います。送り始める前に、必ず読んでください。

第2部 準備する

  • 第3章 戦略を決める:誰に・何を・なぜ今:狙う顧客像(ICP)、相手の課題の仮説、最初に差し出すもの(オファー)、提案のきっかけを決めます。
  • 第4章 営業リストを作る:公的なデータベースなどを使ってリストを作り、重複を除き、NGリストと照らし合わせ、優先順位をつけます。

第3部 送る

  • 第5章 文面の書き方:受け手がどう読むかを出発点に、文面の部品と組み立て方を説明します。
  • 第6章 例文集:きっかけ別・商材別・部署別など、そのまま直して使える例文を集めました。
  • 第7章 送信の実務:フォームの項目の埋め方、送ってはいけないフォーム、送った記録の残し方を扱います。
  • 第8章 返信対応から商談へ:返信の種類ごとの返し方、日程の決め方、初回の商談の進め方を説明します。

第4部 育てる・仕組みにする

  • 第9章 数字で改善する:指標の定義と計算式、どこで止まっているかの見立て方、比べ方の基礎を扱います。
  • 第10章 自動化・ツール・外注を使いこなす:自動にしてよいところと人が見るべきところ、ツールや外注先を選ぶ基準を説明します。
  • 第11章 社内ルールとトラブル対応:運用のルールブック、停止の依頼の処理、苦情への対応を扱います。
  • 第12章 ほかの方法と組み合わせる:電話・メール・手紙・展示会などとの組み合わせ方と、これからのフォーム営業を考えます。

読み方のおすすめ

読者の状況によって、読む順番を変えてもかまいません。

  • これから始める人:第2章を読んでから、第3章から順に読み進めてください。
  • 始めたが、成果が出ない人:まず第9章で、どの段階で止まっているかを確かめます。そのあと、止まっている段階の章に戻ります。
  • チームのルールを作りたい人:第2章、第10章、第11章を先に読み、運用の決まりを固めてから全体を見直します。

やってみよう

課題1 いまの新規開拓の方法を書き出す

自社がいま使っている新規開拓の方法を、次の表に書き出してください。数字が分からない欄は「不明」と書き、次の月から記録を始めます。

方法1か月の件数かけた時間商談数
(例)テレアポ300件25時間2件
(例)展示会年1回準備40時間6件
フォーム営業

(例)の数字は、記入のしかたを示すための架空の数字です。書き出したら、「商談1件あたりにかかった時間」を、かけた時間 ÷ 商談数 で出してみましょう。方法どうしを同じものさしで比べられます。

課題2 商材との相性を点数にする

自社の商材について、次の6つの問いに答えます。「はい」は2点、「どちらとも言えない」は1点、「いいえ」は0点です。

  1. 相手は法人か
  2. 相手の課題を、一文で説明できるか
  3. 提案のきっかけ(出店・採用・新サービスなど)を、外から見つけられるか
  4. 1社と取引が始まれば、調べて書く手間に見合うか
  5. 狙う会社が、数十社以上あるか
  6. 資料や短い説明など、相手が気軽に応じられる入口を用意できるか

合計が12点に近いほど、フォーム営業に向いています。点数の区切りは、この本で用意した目安です。9点以上ならフォーム営業を軸に、5〜8点ならほかの方法と組み合わせて、4点以下ならほかの方法を中心に考えます。「いいえ」がついた問いは、第3章で戦略を考えるときの宿題になります。

課題3 受け手の立場で読んでみる

自社のサイトに届いた営業の連絡を、5件ほど見せてもらいましょう。総務や広報の担当者に頼むと、見せてもらえることがあります。それぞれについて、次の3点を確かめます。

  • 誰から、何の用件か、すぐに分かったか
  • 自社に関係があると思えたか。その理由は何か
  • 自分が窓口の担当者なら、転送するか、そのままにするか

あわせて、自社のフォームの内容がどのアドレスに届き、誰が読んでいるかも確かめてください。受け手の目を持つことが、よい文面を書くいちばんの近道です。

この章のまとめ

  • フォーム営業とは、企業のサイトの問い合わせフォームから、営業・提案の連絡を送ること。相手が公開した窓口を、提案のために使わせてもらう行為である。
  • 送った文面を最初に読むのは、多くの場合、窓口の担当者。決める人に読まれる前に、数秒で仕分けられる。
  • テレワークを導入している企業(常用雇用者100人以上)は、令和7年の調査で50.1%。オフィスにいない働き方が定着し、文章の連絡の価値が上がったと考えられる。
  • 買い手は、売り手と接する前に自分で調べて候補を絞る傾向がある。候補に入れてもらうきっかけづくりが大切になる。
  • ほかの方法と比べると、フォーム営業は「狙った会社に、相手が読む時間を選べる形で、理由を届けられる」方法である。
  • 向くのは、法人向けで、課題を文章で説明でき、提案のきっかけを外から見つけられる商材。
  • うまくいく会社は、送った数ではなく商談を目的にし、1社ずつ理由を書き、断りや停止の依頼にすぐ応じる。

この章の参考資料

目次に戻る